経済学PhD留学への出願準備に関する基礎情報

0. はじめに

出願準備に関する基礎情報をまとめました。個別にいただく出願に関するご相談については、十分にお答えできる時間が取れないため、メールをいただいても対応できません。ご相談をいただくことは大変ありがたいことなのですが、まだまだ未熟な学生、調子に乗って全て引き受けていると本末転倒、本業が疎かになってしまうがゆえのこと、何卒ご理解いただければと思います。

1. 注意点

  • 読者として念頭に置いているのは、現在日本の経済学修士課程に在籍あるいは進学を検討していて、来年以降に米国の経済学PhDへの留学を検討されている方です。

  • 米国と書きましたが、カナダやLSEについては、共通点があるものと考えています。

  • あくまで私見に過ぎず、漏れている情報も多々あると思いますので、その点を十分注意して、自己責任でご覧下さい。

  • 私の所属する、あるいは所属した、一切の機関の意見をも代表するものではありません。

2 . 出願に必要なもの

下記は、米国の経済学PhD出願を念頭においた、2020年春現在の大まかな情報です。各大学によって実際に必要な書類は多少異なるため、必ず各自でご確認ください。

2-1. 必ず必要なもの

2-1-1. 推薦状(通常3通程度、指導教授らから)

出願においては、最も重視されていると言われています。経済学において、推薦状がどれだけシリアスなものかは、林文夫先生のコメント を見ていただくのが一番良いと思います。推薦状は、成績はもちろん、卒業論文や修士論文を踏まえて、「学生がどれだけ研究ができるか」を、指導教官をはじめ学生の実力をよく知る方々に客観的に書いていただくものです。後述するライティングサンプルとも密接に関係しています。また、後述しますが、推薦状依頼は早め早めにすべきです。私の場合は11、12月出願締め切りの際は、基本的にはその年の4,5月に正式に依頼をしました。さらに、指導教官の先生を含めて、出願の相談の段から、推薦状を頼むかもしれないとのことを、お話していました。

2-1-2. エッセイ(Statement Of Purpose, 研究計画書)

最も想像しやすいものです。2ページ程度で研究の関心などをこれまでの経験を踏まえて述べます。

2-1-3. 成績(学部と大学院)

Overprepとして米国でも話題になりましたが、日本の大学からトップ校に留学された学生のほとんどが、大学院レベルのコースワーク(ミクロ経済学のMWGとゲーム理論に加えて、マクロ経済学と計量経済学)で良い成績を収めているように思います。加えて、実解析や微分方程式の授業でAをとっていると良いと思います。私は実解析のみとっていました。MITの同級生の2割程度は学部時に数学を専攻していますし(全員が理論家志望でもない)、2018年の出願時は、履修した数学の授業リストを提出させる大学が多かったです。大学院まで来て成績なのか、とも思われますが、たかが成績、されど成績です。全てが全てご自身の研究に直結するかはさておき、決定的なシグナルとなっているのは否定し難い事実です。

2-1-4. 英語スコア (TOEFL or IELTS)

TOEFLを求められることが多いです。周りの日本からの合格者は大体最低100点は取っている印象ですが、高いに越したことはないでしょう。2018年出願時には、シカゴ大学などは4セクションとも26点以上を求めていました(ただ、これは額面通りに受け取る必要もなく、少し不足していても英語要件を満たさずとも合格できたケースがあるようです)

2-1-5. GRE (General and/or Subject)

通常は、Verbal, Quantitave, Writingからなる Generalのみです。Verbalで150程度、Quantitativeで170点満点、Writingで最低3.5点、というのが周りの日本からの合格者の通説です。無論、MITにいる他国の学生に聞けば、Writingはnon-nativedでも4.5以上が当たり前のようですが、日本からは周囲には3.5で合格している人がほとんどなので、現時点ではそれ以上の点数が必要条件というわけではなさそうです。蛇足ですが、しかし、ライティングは研究者にとって非常に重要なスキルなので、苦手意識は早めに克服しておくのが良いと思われます。

2-2あると望ましいもの

2-2-1. ライティングサンプル(研究成果の一端)やCV(レジュメ)

多くの大学で求められます。私は修士論文のダイジェスト版を提出しました。「ライティングサンプルは読まれない」という話も聞きますが、複数のfacultyに、「論文面白かったからpushしたよ」と言われたので、少なくとも、全ての大学でその主張が当てはまるわけではないと思います。また、ライティングサンプルは卒業論文や修士論文のダイジェスト版になることが通常だと思いますが、その過程も、推薦状を書いてくださる先生方は評価してくださるわけです。仮にライティングサンプルが出願先で読まれないとしても、卒業論文や修士論文で良いものを仕上げることは非常に重要だと思われます。提出するかどうかなどは推薦状を書いてくださる先生とよく相談してください。

2-2-2. 外部奨学金

通常、トップ校では学費免除かつ生活費支給がなされますが、大学によってはそれがない場合もあります。また、大学側が提供するにせよ、自分から奨学金をとってくることで、加算されたり、TAやRA負担義務が免除されたりします。奨学金を獲得することで一定のシグナリング効果がある他、大学側からしても外部奨学金を持っている学生の方が大学の負担が少ないため、有利になりことは間違いありません。私は 中島記念国際交流財団様にお世話になっていますが、東大のまとめページにかなり包括的にまとまっています。


3. 皆さんにとって有用であろうリンク

数々のトピックをカバーしている先生方のホームページのリンクを転記しておきます。

Advice for Applying to Grad School in Economics by Susan Athey, Stanford.

英語だが、かなり基本情報がコンパクトにまとまっている


経済学PhD応募のコツ by Mitsuru Igami, Yale

おそらく日本で最も読まれている、PhD応募のコツについての決定版です


ブログ by Alexis Akira Toda, UCSD.

入試選考プロセスについて日本語で読める貴重なブログ


『ロンドン桜』:課外授業1限目【PhDへの道】 by Yosuke Yasuda, Osaka-U

合格者数などの生々しいデータも載っています